ねじまき士クロニクル

名もない整備士のつぶやき

呉市にてロヒンギャ難民の受け入れ

 仏教は他の宗教にも寛容だから他宗教への迫害は起こらない?

そうとは限りません。宗教だけの問題ではないかもしれませんが、現在進行形で多数派の仏教徒によってイスラム教徒が迫害されている国があります。

場所は東南アジアのミャンマー。別名はビルマ。面積は日本の二倍弱。人口は日本の半分弱。他民族多言語国家です。数ある言語の中で共通語はビルマ語。人口の9割が上座仏教徒、残りの一割がキリスト教イスラム教、ヒンドゥー教、精霊信仰です。

 人口の9割を占める上座仏教は日本の形式だけの仏教とは大きく異なっています。ビルマの現行の憲法では信仰の自由を謳いながら上座仏教だけ特別扱いされています。

 上座仏教の僧侶は日本のお坊さんとは違い、俗世の欲望を断って修行に専念しています。結婚や異性との接触は禁止、労働も禁止です。修行に専念することで自力救済の道を目指しています。本来は信徒もその道を目指しますが、俗世との絶縁して修行の道に入ることは誰でもできることではありません。そのため、一般の信徒は修行をしている僧侶を寄付で支えて徳を積むという考えです。徳を積んだ人間は来世で出家ができる心が強い人間になれると考えられています。

 ビルマ政府は1948年の独立以来、植民地時代に移住してきたインド系のムスリムヒンドゥー教徒を歓迎できない移民として扱ってきました。

 1982年に制定された国籍法では、イギリスと戦争を開始した前年の1823年から住んでいた人たちだけがビルマ人『国民』という認識です。1948年の独立後に申請して国籍を取得した人(インド系、中国系、英系ビルマ人)は『準国民』法律に基づいて帰化した人たちは『帰化国民』です。同じ国民でも3つに分けられています。

 この国民を分ける1823年というのは、イギリスと戦争を開始したという便宜的な基準のように見えますが上記のようにビルマの人たちにとっては大きな意味を持っているようです。

 2012年、ロヒンギャの人たちが迫害されているのを受けて、アウンサンスーチーが国民を3つに分けている国籍法を改正しようとしても国民の大反対にあいました。現在でもロヒンギャの人たちはビルマの人たちからは不法滞在という認識を受けています。なおアウンサンスーチー三島由紀夫を日本語で読めるほどの語学力だそうです。アウンサンスーチーの父も日本に来たことがあり縁があります。

 ロヒンギャの方達は元々イギリス統治下の19世紀にベンガル地方から移民してきたムスリム移民と独立後の混乱期に同じくベンガル地方から移民してきたムスリム移民から成り立つ集団です。文献では1950年ごろまでしか遡れないのに、彼らはもっと長い歴史を持つと自負しているそうです。一方、ビルマの人たちの大半はロヒンギャを国民ではなく不法移民者と捉えている様で認識の相違があります。 

 

 

 長くなりましたが、これがニュースの背景です。

呉市は3月上旬にミャンマーからのロヒンギャ難民22人を広に受け入れました。マレーシアに一時的に避難していた方たちの様です。呉市の総合人材サービスの会社が正社員として雇用して生活を支援する体制が呉市での受け入れのきっかけとなったそうです。

 呉市。総合人材サービスの会社。正社員。広と言えばブラジル人が多い街だった印象があります。もちろん人道支援の側面が第一にあるとは思いますが、この難民の受け入れも形を変えた労働力の確保に見えなくもないです。

 いつまで難民を受け入れるのか?これが最初なのか?それとも最後なのか?他の地域の難民も受け入れるのか?それともいっそのこと何万人か呉市に難民を呼んで人口減少の問題も解決するのか?ロヒンギャの人たちが呉にいる間にビルマの問題の根本が解決するのか?根本の問題にも首を突っ込んでいくのか? 言うまでもなく大規模な人の移住には必ず価値観の摩擦が起こります。ミャンマーで起こっている問題を、何十年か後の日本に形と場所を変えて再現することのないように、呉市には何十年も先のことが見えていることを願います。