ねじまき士クロニクル

名もない整備士のつぶやき

UBER(ウーバー)の死亡事故について思うこと

 2018年3月18日夜、アリゾナ州で完全自動運転の試験中だったUBERの車両が歩行中の女性をはねた。女性は病院に搬送されたが亡くなった。この事故を受けて、UBERカリフォルニア州アリゾナ州オハイオ州で行っていた公道での完全自動運転の走行テストを中止した。

 

 この事故を受けてトヨタ自動車もアメリカで行っていた自動運転の実験を中止しています。トヨタがアメリカで実験していたのも、起伏が激しく曲がりくねって信号が多い日本の道で実験するよりも、直線が多いアメリカでのほうが実験に適していたからでしょう。もちろん法規制の関係もあるはずです。それが今回の事故で実験の中断となりました。

 アメリカの交通事故死者数は4万人近く、日本の10倍です。アメリカでは北海道の直線道路のような単調な道が延々と本当に延々と続きます。カリフォルニア州のロサンゼルス近郊からネバダ州のタホ湖までドライブしたことがありますが、それはもう単調な道でした。速度超過、居眠り、油断、少ない信号、アメリカでの交通事故の死亡者が多い理由がわかります。新幹線でもあればよかったのですが、私がお世話になったアメリカ人は最寄りの駅を知らない、利用したことがないということでした。ドライブの際に早朝の貨物列車を見かけた時には写真をパシャパシャ撮っていました。そんな車社会のアメリカの人たちにこそ自動運転は必要なはずです。

 今回の交通事故は人が運転していたら特にニュースにもならなかったはずです。もしニュースになっていても「運転手にとっては避けようがなかった不幸な事故」として大半の人は翌日には忘れてしまうようなものだったかもしれません。ただ、今回は人は運転していませんでした。自動運転中に起った世界初の対歩行者の死亡事故になってしましました。「自動運転にとって避けようがなかった不幸な事故」だったのかどうかはこれからの検証が待たれます。

 さすがに自動運転車両が逆走したり、挙動が不安定になったり、歩道に入って歩行者をはねたりするのは論外ですが、突発的に起こったイレギュラーな状態まで自動運転にすべての責任を負わせるのは公平ではないというのが私の考えです。今回の事故ではさすがに実験なので法定速度を大幅に超えるようなことはないと思います。夜間なのでもちろんきっちりとライトも点灯しています。一方、歩行者は自転車を押しながら横断歩道のない場所を横断しています。(運転手は前方に集中していませんでしたが)明らかに車両を確認せずに道路を横断している言わばイレギュラーな状況です。

 事故の動画を見ずに原因を見ずに自動運転は危険と叫ぶことは早計です。今回の事故は自動運転だろうが、人が運転していようが防ぐことはかなり難しい事故に思えます。歩行者がヘッドライトに照らされてから車に当たるまであっという間です。速度が出ている以上、技術によって空走距離が0になっても制動距離が0にならない限り、飛び出してくるものに対しては衝突を避けられません。飛び出してくる人や動物を感知するセンサーがあったとしてもそれは同じです。空走距離が0になるのは近い将来実現するかもしれませんが制動距離が0になるのはたぶんもっと先の話になります。

 それでも、自動運転は現在まだ未完成の技術ですが、近い将来におそらく実現します。そして人が運転するよりも交通事故で亡くなる人が少なくなる自動運転中心の社会が待っているはずです。もしかしたら人が運転することが禁止される未来すらあるかもしれません。特に二輪とか…

 とりあえず今の日本は、免許を持っているドライバーによって年間4000人程が亡くなっている社会です。これは何となく受け入れている社会の暗黙の了解のようなものかもしれません。便利な生活と引き換えにある程度の数の事故。自動運転が運転手に取って代わったら年間の交通事故での死者は何人になるでしょうか?現在、全世界での交通事故の死者数は年間約130万人です。どこに決着を持ってくるのかは答えがない問題ですが、自動運転を推進する限り近い将来に誰かが、私たちが?線を引かないといけない問題になります。