ねじまき士クロニクル

日向の窓にあこがれて

ヤマザキマリさん

 キリスト教の存在しなかった世界というのが知りたくて、ローマのことを勉強していますが、かの有名な「テルマエ・ロマエ」を読んだのはここ最近の話でした。映画は何年か前に見た記憶がありましたが、その何年か前はローマ帝国のことなどまったく私の頭の中にはありませんでした。何年か前の私の頭の中にあったのは週に一度の定休日と、月に一度の給料の使い道のことだけでした。

 テルマエ・ロマエの中に時折挟まれるコラムからも、ローマ帝国の時代への愛が詰まっているのがわかります。マンガもコラムも読んだら温泉に入りたくなってしまいます。そして「ローマ人の物語」を読んだ人なら、テルマエ・ロマエとの共通の場面に気付きますし、小ネタがいちいちわかって面白いです。

 調べてみたら作者はマンガだけではなくエッセイも書いているそうで、作者のヤマザキマリという人がどんな人か知りたくて手に取りました。が

 お金持ちの家庭の人たちの話。という感じです。住む世界が違います。作中では若いころのイタリア生活中はお金がなかったエピソードがありますが、本当にお金がない人はイタリアには行けないような気が…

 

東京から北海道に移り住んだのは一九七二年、私が五歳の時です。母は、オーケストラのヴィオラ奏者で、札幌交響楽団に初の女性団員として入団するため、両親の反対を押し切り、勘当同然で、縁もゆかりもないこの地にやってきたのです。

                

やがて指揮者だった父と恋に落ち、結婚。父が病気で他界してからは、女手ひとつで娘たちを育ててくれました。

                

初めてひとり旅をしたのは一四歳の時でした。オーケストラのヴィオラ奏者をしている母は、ヨーロッパに音楽家の友人がたくさんいます。一か月かけてフランス~ドイツ~ベルギーを巡るその旅は、もともとは母がその人たちに会いにいくはずのものでした。ところが、急に母が行けなくなったので、冬休みだった私が代わりに行くことになったのです。

                

明治生まれの祖父は、大学を卒業すると横浜正金銀行に入り、サンフランシスコ、ロサンゼルス、シアトルに支店を作るべく、一〇年間をアメリカで暮らしました。麻のスーツのよく似合うお洒落な人で、帰国した時、スーツケースの中からロシア人バレリーナからの「ディア・トクシロウ」で始まるラブレターがいっぱい出てきたらしい。

 

 こんな環境で生まれたら、外に目が行くのは当然かもしれません。フランスやドイツやベルギーは私にとって地図上の国です。とりあえず本とネットで得た知識で行った気になっておきます。たぶん今後も死ぬまで行く機会はないでしょう。整備士として働いていたら3連休以上は年に一回あるかないかです。頑張れば3連休でヨーロッパに行けますか?

 そして、内向きだと言われている「さとり世代」や「ゆとり世代」に対して怒っています。上の世代の人たちから見れば、日本の悪い出来事の大部分は、もしかしたらこの世代のせいかもしれません。

                

突き詰めて考えれば、戦争だって、そうやって起こるのではないでしょうか。どうしてそんな横並びの価値観になってしまったのか。やっぱり、それは教育、それも親の教育の影響が大きかったのではないかという気がします。

  一応私もこの世代ですが、戦争が起きたら私のせいかもしれません。金正恩やアメリカが何かしないことを祈るばかりです。もし何かあったらヤマザキマリさんすみません。私の親は、中学生のころに海外にアメリカに子供を送る、という教育をしてくれませんでした。周りと同じような環境で横並びの価値観で、のほほんと育ちました。子どもの頃は自転車で行ける範囲が私の世界でした。とても小さい世界に生きていました。地球全部を使って生きればいいじゃんとヤマザキマリさんはお勧めしていますが、生まれ育った地域が今でも一番良いと思っている内向きの小さい男です。

 ヤマザキマリさんは1967年生まれです。何十年か前の日本人でここまで、外に目を向けて子供を教育出来た親は一握りの気がします。私にとってもヤマザキマリさんの生き方は本の中の夢物語です…イタリアもいいかもしれませんが、瀬戸内海も悪くないですよと内向きな意見を言っておきます。

古代ローマ時代においてはキリスト教もまだカルトな新興宗教のひとつでしたから、優しさも愛も宗教的な規範が教えてくれたものというわけではない、もともと人間の中に確かに存在するものだということがわかるわけです。キリスト教が「愛とはこういうものですよ」「罪とはこういうものですよ」と宗教的な倫理観を規定する前だからこそ、人間とは何か、掛け値なしの本質に触れられる気がして、それであの時代に惹かれるのだと思います。

  それでも、どこかでヤマザキマリさんがクリスチャンだという文章を見たような…と、色々書きましたが、今描かれているプリニウスも面白いです。