ねじまき士クロニクル

日向の窓にあこがれて

戦争にチャンスを与えよ 中国・北朝鮮対策

今日では、外部からの介入によって「決定的な勝利」と「戦争による疲弊」がなくなり、多くの戦争が「終わることのない紛争」になってしまった。戦争は巨悪であるが、政治的な問題を解決し、平和をもたらすことがある。国連NPOなどの介入は戦争をさらに悲惨な状態にする可能性がある。停戦は戦争状態の締結であり、平和ではない。介入するなら50年ほど駐留し次世代の人間が出てくるまで責任を持つ覚悟が必要。責任を受け持つ覚悟がないなら人道的な介入などしないほうが人道的である。

エドワード・ルトワック 戦略家、歴史家、経済学者、国防アドバイザー

 

 「戦争にチャンスを与えよ」の論文を要約するとこんな感じになるでしょうか?感情的にならずに戦争を分析しています。その後は日本への具体的な提言です。尖閣北朝鮮常任理事国、日本の外交の問題に関して痛いところを突いています。

   北朝鮮は、特異な政権である。特異な点として、二つ挙げられるだろう。一つは、リーダーのヘアスタイルがひどい、ということだ。金正恩の髪型は本当にみっともない。

 もう一つは、北朝鮮の軍事関連の技術力は侮れない、ということだ。根本的な意味で、日本やアメリカ以上の底力を持っている。

  戦略家というだけあって日本を敵視する北朝鮮に対する処置ももちろん提言しています。それは経済制裁としてワサビの輸出を止めるということです。金一族は一家そろって日本の寿司が大好物なのでかなり困るだろうということです。ふむふむなるほど確かにワサビでミサイル開発が止められるかもしれません。

 と、冗談もたまに挟んでいますが、中身は真剣です。北朝鮮に対して日本に「降伏」「先制攻撃」「抑止」「防衛」のどれかの処置をとることを進めています。現在の日本の平和ボケが戦争につながると警告しています。確かに、人工衛星を打ち上げ、中距離弾道ミサイルを発射して、核兵器の開発を行って、日本に宣戦布告のような声明を発しているのに無関心と言っていいかもしれません。ミサイルが発射されてもせいぜい「仕事が休みになった」「学校が休みになった」「株価が北朝鮮のせいで下がった」というようなものです。現実にどこかの島根にミサイルが飛んでこないと動かないのかもしれません。

現在の日本は、北朝鮮に対して何も行動しておらず、唯一選択しているのは、「まぁ大丈夫だろう」という態度だが、このような態度こそ、平和を戦争に変えてしまうものなのである。

  多くの日本人は気づいていますが…何もせず遺憾を表明するのは最悪と言っています。一例として、小泉総理が拉致問題を解決するために北朝鮮と直接交渉したことを誉めています。そういえば、小泉政権以降、誰一人として北朝鮮から拉致被害者は帰ってきていません。北朝鮮の犯罪に対して日本は残念ながら無力なのかもしれません。

 

 尖閣に対しては、どんな名目でもいいから武装した誰かを上陸させて実効支配しろ。と至極まっとうなことを提言しています。いわば中国が漁師を使ってやっていることを日本が公式にやるわけです。中国に実効支配されてそれを取り返す費用や危険を考慮したら間違いなく正論です。

 そして日本が東南アジアで仲よくすべきは…ベトナムを勧めています。国内が安定していてさらに仏教徒。歴史を見ても、ベトナムは大国に屈せず、中国に抵抗して、フランスに抵抗して、アメリカに抵抗しています。これは当然と言えるかもしれません。アメリカ、オーストラリア、ベトナム、インドなどの国と協力して中国に対応するのが理想としています。他の国は同盟を組むにはリスクがあるようです。インドネシアは親中(新幹線の件もあります)、フィリピンは内情が不安(潜在的に反米)、マレーシアは国際関係の関心が低く外交能力が低い。どちらにしても、領土は取られたら終わりです。北方領土竹島を見れば日本人なら誰でもわかります。

 

 日本の常任理事国入りの著者の戦略は「インドと共同で常任理事国になり、その席を何年か毎に交代する」というものです。確かに、ドイツやアフリカ、ラテンアメリカの国々と一緒のタイミングで常任理事国になるのを狙うよりも可能性が高そうです。

イタリアやスペインは、ドイツに投票するくらいならザンジバルに投票する。アルゼンチンやチリは、ブラジルに投票するくらいならザンビアに投票する。そして、安全保障問題をナイジェリアと南アフリカに委ねる、という考えにはアフリカ中の諸国が脅威に慄くだろう。

 完全に無責任な国の代表たちは、モンテカルロの夜の女性たちよりも、はるかに安い値段で買収される。

日本が、本気で常任理事国の席を欲するのであれば、私が提案した方法で狙えるはずだ。もし成功したら、伊東の、私の大好きなあの温泉旅館の庭に、私の銅像を建てて欲しい。

 現実的に考えて、アフリカやラテン諸国に任せられるかどうか。たぶん無理です。今の国連が信用できるかどうかは別ですが、確かに南ア、エジプト、モロッコ、ブラジルあたりを考えてみても責任を果たせるとは思えません。日本が常任理事国になった方が貢献できそうです。著者の銅像を建てる日が来てほしいものです。

  著者は「戦争にチャンスを与える」例として、どこかの介入によって「もしも日米が1944年に停戦していたら?」という問いを投げかけています。徹底的にアメリカと戦った結果、今のような日米関係になりました。歴史にもしもは禁物ですが、一時の残酷な行いはその後の末永い平和をもたらすのかもしれません。停戦と敗戦はまったく違います。停戦という状態の想像がつきませんが…

 どこかの介入によって、停戦になった結果、東京大空襲もなく、沖縄戦もなく、広島にも長崎にも原爆が落とされずに、国境も今より広くてめでたしめでたし…? 

 

 

追記

 国連演説でトランプ大統領が北朝鮮の拉致を非難しました。第三国がわざわざ拉致問題について言及するということは…?本書では安部首相が「まれにみる戦略家」と評されていました。水面下で活動した可能性が…?日本は外圧に弱いですが、北朝鮮に通用するのかどうか。

 

戦争にチャンスを与えよ (文春新書)

戦争にチャンスを与えよ (文春新書)