ねじまき士クロニクル

日向の窓にあこがれて

ローマ人の少子化対策

ローマ人の物語」を再読中です。

 紀元前一世紀のローマの指導者層では今の日本のように少子化に悩まされていました。

前二世紀までのローマの指導者階級では、グラッスス兄弟の母コルネリアのように、十人もの子を産み育てるのは珍しくなかった。それが、カエサルの時代にはニ、三人が普通になる。アウグストゥスの時代になると、結婚さえしない人が増えた。

  紀元前一世紀前半のローマの指導者階級では子供を育てること以外の人生の過ごし方が増えたことを指摘しています。独身でも奴隷が家事をやってくれて子どもがいなくても不自由がなかったということです。現在の先進国では奴隷の代わりに家電が家事をしてくれて、子どもがいなくても不自由なく暮らすことはできます。現在の先進国と状況は似ているかもしれません。

 紀元前18年、アウグストゥスにより二つの法案の提出。ローマの法律はその区別のために、提案者の名前を付けて呼ばれていました。アウグストゥスカエサルの養子なので「ユリウス」です。

 「ユリウス姦通罪・婚外交渉罪法」

「ユリウス正式婚姻法」

 

姦通罪

  この法案が成立する以前は、妻に浮気された夫は離婚か殺害での対処。同様に家父長権を保持していた父親も娘を離婚させたり、殺すことで対応。この法案が成立したことにより姦通罪は私的な問題から公的な犯罪に。公的な犯罪になったことで誰でも告訴が可能に。当事者だけではなく姦通幇助した場合も罪に問われる規定が存在。

 

婚外交渉罪法

 女奴隷や娼婦を除く、正式婚姻関係以外のあらゆる性的関係も公的な犯罪と規定。

 

正式婚姻法

  ローマの元老院階級と騎士階級の市民に対して。男は25歳から60歳、女は20歳から50歳まで、独身に不利な制度の創設。

 子どもを持たない女性は50歳を越えると相続権の喪失。さらに5万セステルティウス以上の資産があるならば誰かに譲渡する義務を負う。50歳以前でも2万セステルティウス以上の資産を持つ女性は結婚するまで毎年、資産から上がる収益の1パーセントを国家に収める。(1セステルティウスはワイン一杯ほどの値段?)独身の男性は遺産の相続時の不利益や公職のキャリアに就く際に不利に。

 

  世の独身男女になかなか厳しい法律です。逆に子供をたくさん産んだ女性に対しては特典を与えています。3人以上子を産んだ女性は家父長権から解放されて経済上は男女平等になったそうです。この少子化対策の法律は古代ローマでは不評で割とすぐに現実に即したように修正されたようです。提案したアウグストゥスの娘ですら正式な婚姻を守れず浮気して島流しにされていました。当のアウグストゥスも妻との間に子ができることはありませんでした。それでもこの少子化対策ローマ帝国の基本政策として長く重視されていたそうです。

 カエサルに実力で後継者に選ばれておきながら、自身は後継者の「血」にこだわったアウグストゥスでしたが、後継者として期待していた血縁者に次々と死なれ、結局は妻の連れ子であったティベリウスを後継者に指名することとなりました。ティベリウスの死後の皇帝には自分の血を受け継ぐものを皇帝にするように遺言を残しています。アウグストゥスだけではなく五賢帝時代のローマでも最後のマルクス・アウレリウス以外は後を継ぐ子がおらず、4人の皇帝は実子を継がせることはありませんでした。いつの時代でも後継ぎというのは切実な問題ですね。

 ただ、少子化対策はローマ指導者層に限った話の様です。ローマ帝国全体で見れば人口は増えていました。兵役に就けるローマ市民権を持つ17歳以上の男子の国税調査の記録が残っています。

紀元前28年…406.3万人

紀元前8年…423.3万人

紀元後14年…493.7万人

 少子化対策だけではありませんが、アウグストゥスの基本政策政策が実を結び、その後、ローマ帝国パクス・ロマーナの時代を迎えることになります。

 

 増税大好きな少子化の日本でも独身税や独身が不利になるような制度の創設がそのうち作られるかもしれませんね。それともローマ帝国のように移民を受け入れて日本人化して、そのうち移民や移民の子孫たちが総理大臣に…?

 

ローマ人の物語Ⅵ パクス・ロマーナ 少子化の項より