ねじまき士クロニクル

日向の窓にあこがれて

コンゴ アフォンソ1世 レオポルド王の亡霊

A native of the Kongo knows the name of three kings: that of the present one, that of his predecessor: and that of Affonso

コンゴの国民は3人の国王を知っている。現在の国王。先代の国王。そしてアフォンソ1世。

 

  1482年にポルトガル人がコンゴに初めて来た。それからのコンゴは、奴隷貿易の拠点になり1530年ごろまで毎年5000人が奴隷として大西洋を渡った。それから1600年になるまでには毎年15000人に増えた。

 ほとんどの奴隷は沿岸からかなり離れた場所で捕らえられ、奴隷商人は地元の首長から奴隷を買った。奴隷商人は奴隷を注意深く値踏みをした。

「健康な男、高値」「少女、名前不明、瀕死、価値なし」「少女、瀕死、価値なし」

  1506年から40年に及ぶ国王アフォンソ1世の在位期間はコンゴにとって苦しいものとなった。アフォンソ1世が生まれた時、国民は誰一人ヨーロッパ人を知らなかった。そして、アフォンソ1世が亡くなった時、国民はヨーロッパの奴隷貿易の脅威にさらされていた。

 在位期間の後半は、アフォンソ1世は有能な国王ぶりを示した。西欧の知識や技術を導入し、コンゴで取れる銅と引き換えに西洋の商品を導入した。

 アフォンソ1世ももちろん、他のアフリカの首長同様に反奴隷主義者ではなかった。奴隷はいたが戦争で負けた相手などであって、西洋人が思うような大規模な商品ではなかった。国民が商品として連れ去られている現状をポルトガルに対して手紙を書いている。

 毎日、奴隷商人が国民を誘拐している。一般市民の子どもたちに限らず、貴族の息子たち、私たちの家族でさえも…これらの略奪や荒廃は国中に広がっていてコンゴから人がいなくなるのではないかと思うほど…この国に必要なのは教師と聖職者だけです、ワインと小麦以外の商人はこの国には必要ありません。これは私たちの願いです。私たちの国は奴隷商人のための交易の場ではありません。

 

主よ…巨大な欲望が私たちの国民を苦しめています。キリスト教徒でさえ、私たちの家族を捕まえて奴隷にする商売に手を染めています。

 

 実際にはコンゴでは民衆に元々信じられていた信仰があったのに、現地の宗教とキリスト教の衝突により国力が低下した。ポルトガルコンゴの政治にも経済にも宗教にも深く関わって後戻りはできなくなった。

 アフォンソ1世からの嘆願に、もちろんポルトガルの国王は何の共感も示さなかった。

「人がいなくなってしまうからコンゴ奴隷貿易を辞めて欲しい?ポルトガル人がそこにいるが、今まで奴隷貿易などされていないかのように、コンゴがどれだけ広大で人がたくさんいるか教えてくれている」

 アフォンソ1世が死ぬ前、10人の甥や孫や親戚が宗教教育という名目でポルトガルへ送られる途中に消息を絶ったということを聞いた。国王でさえ彼らが生きているか死んでいるかさえわからなかった。彼らは結局見つかった。ブラジルで。奴隷の身分で。アフォンソ1世の治世の最後には王族の周囲ですら奴隷貿易の脅威にさらされていた。

 1500年代の終わりまでには他のヨーロッパも奴隷貿易に参加。ますますアフリカの荒廃が進むこととなった。

 1665年にはコンゴポルトガルが戦争してポルトガルの勝利。国王は殺害された。

 1800年代中盤になるまでは、ヨーロッパはアフリカを資源の供給先としてしか見なしておらず、内部の探索すらしていなかった。現地の部族同士の対立や金を使って奴隷を買って新大陸に奴隷を送ってお金を儲ける。それだけのためにアフリカがあった。

 アフォンソ1世の手紙を除いて、コンゴ側の記録は残っていない。それ以外は全てヨーロッパ側の記録である。

 

 

 King Leopold’s Ghostという本の導入部の私なりの要約です。和訳はありません。日本人にとって最も興味のない地域と言ってもいいアフリカの歴史に関しての本なのでこれからも和訳が出ることはないでしょう。

 ラテンアメリカや、アメリカを考えても分かりますが、記録を残さずに歴史の表舞台から去るということ、敗者になるということが、どれほど恐ろしいことなのかわかります。そしてコンゴの悲劇はこれで終わりではありませんでした。アフォンソ1世の時代は悲劇の始まりに過ぎませんでした。1500年代には記録を残さずに敗れたコンゴですが、1800年代後半にもなると悲劇を生んだ「ゴム」とともに「カメラ」という便利な機械も発明されていました。

 写真のおかげでその証拠は「コンゴ 手首」と画像の検索をすればすぐに出てきます。ポルトガル人に代わってベルギー王レオポルド2世に支配されてからのコンゴはゴムの採取のために強制労働させられました。何百万人もの人が亡くなっています。遠い昔の話ではなく、100年ちょっと前の話です。マーク・トウェインコナン・ドイルは「コンゴの犯罪」についての文章も書いています。それでも世界は西洋中心に回っているので、証拠が残っているにもかかわらず、このことは人々の頭の中からも、歴史の中からも、もちろん教科書の中からも見事に忘れ去られています。その悲劇についてはまたいつか。

 現在のコンゴは海外旅行にはお勧めできないとの外務省からのお墨付きが出ています。

 

King Leopold's Ghost

King Leopold's Ghost