ねじまき士クロニクル

日向の窓にあこがれて

星の王子さまにまつわる感想文のようなもの

 前回の零戦からの飛行機つながりです。飛行機乗りの物書きと言えばとりあえずサンテグジュペリしか思い浮かびません。船乗りの作家ならコンラッド?医師ならコナン・ドイル森鴎外

 昔から日本では星の王子さまと作者の扱いがひどいと個人的に思います。たぶん星の王子さまを読んだほとんどの人がサンテグジュペリ(1900~1944)の残りの作品を読んでいません。それでもネット上には星の王子さまのレビューの嵐。読書感想文の対象にもよく推奨されるようですが、理解できません。内容がないような話なので私なら星の王子さまで読書感想文は書けません。とりあえずベストセラーを売っとけという精神なのでしょうか。この本を対象にするくらいなら他の児童文学の「ごんぎつね」や「手袋を買いに」「スイミー」の方が書きやすくて良さそうです。それか作者の他の作品である「夜間飛行」や「人間の大地」の方がパイロット生活の実体験をもろに表しているので読書感想文には書きやすそうな気がしますが…

 星の王子さまの名言だけを抜き出して並べて気持ちよくなっている人たちも中にはいますが、たぶんそんな人たちこそ、大切なことは目に見えていないような気がしないでもありません。

 星の王子さま自体を否定しているわけではなくて、あまりにもこの作品だけが持ち上げられすぎです。たぶん薄くてひらがなが多くてみんなが読んでいる本が読まれやすいのでしょう。売れている本といい本はもちろん別です。ベストセラーを謳って販売されている本はたいていろくでもありません。売れている本がいい本ならば世界で一番いい本は聖書になります。私はそんな状態を勝手に嘆いている1人の貧民です。

 星の王子さまを生み出したものは、サンテグジュペリパイロット生活です。今よりも、もっと飛行機の信頼性がなかった時代、空を飛ぶことが命がけだった時代、飛行機を操縦する仲間たちが次々と死んでいった時代、サンテグジュペリが生きて、そして死んだのはそんな時代でした。実際にサンテグジュペリ第二次世界大戦中に撃墜されて亡くなっています。パイロット生活で得た強烈な体験をわざわざ書き残してくれているのに、それを知ってか知らずか星の王子さまだけが読まれている…もったいないことだと思います。星の王子さまについて語られているようなすべては、すでにほかの作品でもっと濃く書かれています。「人間の大地」はフランス語が読めれば原文を読みたいくらいです。

 ネットで調べてみると箱根に「星の王子さまミュージアム」というものまであるそうです。星の王子さまがまるでキティちゃんのような扱いを受けています。箱根と作者との関連がまったくわかりませんが、関東からのお客さんを見こしているのでしょう。そこにはレストランまであります。はっきり言っておしゃれな空間です。食事のメニューが作中で出てきたかどうかは知りませんが、うわばみのオムライスがおいしそうです。