ねじまき士クロニクル

とある整備士のつぶやき

砂糖の世界史

 子どもの頃、読書感想文は嫌いでした。でも、もしも子供の頃にこの本を読んでいたら読んだ内容をうまく読書感想文に書いて要約して自慢したくなっていたかもしれません。

 紅茶派かコーヒー派かと聞かれたら紅茶派ですよね?紅茶と聞いて想像する国は、おそらくイギリスだと思います。そして、紅茶に加えるものと言えば本書のテーマの砂糖です。ただ、この紅茶と砂糖とイギリスという組み合わせの裏には歴史の暗い部分が深く関わってきます。本の結末から引用させていただきます。

砂糖というひとつのモノ、つまり商品をつうじて、近代の世界史をみようというのが、この本の目的でした。こういう目的のためには、砂糖や茶や綿織物は、たいへん都合のよい商品なのですが、そういうモノはほかにもいろいろ考えられます。小麦やコメのような基本的な食糧や基本的な衣料もありましょうし、もっと新しい時代なら、石油や自動車のような商品をつうじてでも、その生産から消費までの全体を注意深く見通すことによって、世界の歴史の動向がわかるはずです。

 

モノをつうじて歴史をみることで、どんなことがわかるのでしょうか。大事なことが二つあります。ひとつは、そうすることによって、各地の人びとの生活の具体的な姿がわかります。

 

モノからみた歴史のもうひとつの特徴は、世界的なつながりがひと目でわかるということです。とくに「世界商品」の場合は、まさしく世界に通用した商品ですから、その生産から消費までの過程を追うことで、世界各地の相互のつながりがみえるのです。

 世界商品とは世界中で普及している商品のことです。現代では携帯電話、テレビ、自動車などになるでしょうか?大航海時代ではそれが、砂糖でした。色、味、遠い異国からの輸入品…砂糖は当時の最高級の商品でした。

 砂糖は熱帯か亜熱帯の地方でしか取れなく、サトウキビから砂糖を製造する過程では過酷な重労働が必要な商品でした。つまり、砂糖の大量生産はそもそもが熱帯地域での強制労働を前提としたものでした。

 イギリスのリヴァプールからイギリス産の商品を積んで出航した船は、西アフリカの海岸近くで奴隷と交換していました。そしてその奴隷をアメリカの新大陸に連れていき売りさばき、砂糖を購入してイギリスに帰りました。これが三角貿易です。

 当時、ヨーロッパ人はアフリカ大陸の内陸部に入ることはできませんでした。マラリヤなどの風土病のためです。そのため、アフリカの現地の支配者を通じて奴隷を購入していました。ヨーロッパ人がアフリカの内部を探索できるようになるには『キニーネ』という薬が出てくるのを待たなければいけませんでした。ただ、キニーネもアメリカ大陸原産の植物からの薬です。この薬も植民地主義と深く関わっています。

 ヨーロッパの気候ではサトウキビや紅茶などの植物が取れないということが、アフリカや、南北アメリカの熱帯に住んでいた人たちにとって致命的な影響を及ぼすことになりました。この奴隷貿易を通じて、アフリカから海を越えて連れていかれた黒人は1000万人程ではないかということです。正確な数字は誰にもわかりません。このように砂糖が人間を別の大陸に連れて行くほどの植物でした。

 逆にヨーロッパにあってアメリカ大陸になかった主要な資源は馬でした。ピサロインカ帝国遠征記を読むといかに馬が当時のインカ帝国の人々に衝撃を与えたかがわかります。ピサロが皇帝アタバルバを捕らえた場面でも、馬の疾走を見てインディオたちが逃げ出したという記述があるくらいです。また、ピサロは少数の馬と少数のスペイン人でインカ帝国を征服しましたが、争いの度に負傷した人と同じように馬の数も数えています。これだけでも馬がどれだけ大切だったかがわかります。またヨーロッパ人は病気に対する免疫を家畜から免疫をもらっていたので、アメリカ大陸の人々はヨーロッパから持ち込まれた病気によってヨーロッパ人と出会う前に疫病で大多数が死んでしまいました。話が馬にそれてしまいました。馬の話はまた今度にしたいと思います。

 アメリカ大陸からの砂糖と、アジアからの茶葉という当時の高級品を混ぜるということがイギリスの上流階級の流行でした。イギリスは上流貴族の真似をする国民性だったので、国民全員が紅茶の習慣を持つことになったということです。イギリスでは茶葉も砂糖も取れないのに、紅茶と言えばイギリスとイメージされるのにはこういった訳があります。ちなみにアールグレイという紅茶は、とある紅茶好きのイギリス人の名前です。また、産業革命のイギリスの労働者を支えていたのは砂糖入りの紅茶のカロリーでした。産業革命が砂糖入りの紅茶を生んだのか、砂糖入りの紅茶が産業革命を生んだのか…産業革命と砂糖と奴隷貿易は切っても切り離せない関係です。他のヨーロッパ諸国はワインが生産できたので、イギリスの様には砂糖が必要がなかったということです。確かにイギリス以外の国では今でもワインが思い浮かびます。もちろん、同様に奴隷貿易を行っていたことは確かです。

 今、砂糖は高級品ではありません。時代が変わり奴隷の代わりに機械がその役割を担える様になったのでしょうか。普段砂糖を食べるときに昔の歴史のことを考える人はあまりいないと思います。ただ、その歴史を知っているか知らないかということは大きな違いがあると思います。

 奴隷貿易で無数の黒人が過酷な目にあった。そして当時搾取されていた多くの国は、今でもその影響から抜け出すことができずに発展途上国。これらの歴史の暗い部分を知っても明るい気持ちにはなりませんが、歴史を学ぶということは知りたくもないことを知るということなのかもしれません。

 ただ、私はカモミールテイーが好きです。

 著者は世界システム論の紹介も行っています。

 馬の世界史は別の方の本です。

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

 

 

 

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