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『この世界の片隅に』 呉の舞台あれこれ

広島

 

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 広島市の南東にある呉市が舞台の戦争映画です。

 映画に出てくる『戦時中の呉』という街を理解しようと思ったら、少し想像力を働かせなければいけません。この映画は戦時中の映画です。戦時中の呉は東京、大阪、名古屋、京都、神戸、横浜、広島、福岡などの都市とともに全国でも屈指の発展していた都市です。東洋一の軍港と呼ばれていた人口40万人の大都市です(今は合併に合併を重ねていても20万人そこそこです) 新潟や京都とともに原爆投下の候補地に選ばれていた街でもあります。

 もしも今、仮に呉を訪れても往時の呉をそっくりそのまま残しているということはありません。映画に出てきた場所も残ってはいますが、今の呉市に最盛期の繁栄はありません。今の呉市は島を合併したことによる高齢化、広島から近いがための若者の流出、重工業の不振、全国でもトップクラスの人口の減少、財政の健全化、陸の孤島、呉駅前のそごう跡地の長期化(もうすぐ4年)などの問題が山積みの街です…

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  私のやっつけ仕事で加工された現在の呉市の地図です。

 大きな黄色の場所周辺が呉での物語の舞台です。作中に出てきた長ノ木町ですが長ノ木トンネルより北側でないと、映画に出てきたような海は見えないような気がしますが…いつか呉市民に聞いてみましょう。

 黄色い場所からさらに北の山が灰ヶ峰です。呉市の郵便番号と同じ『737』メートルです。山頂に丸い球体があります。麓からでも見えるので目印になるでしょう。山頂まで行くのは辛いですが、広島では有名な夜景スポットです。

 次は赤い線についてです。今は線路の跡形も残っていませんがが当時、路面電車が通っていた道です。呉市の東西を繋いでいます。黒色の線の上部の赤い区間は『呉越峠(くれごえ)』と呼ばれている峠です。鉄道にしては無茶な急勾配です。それを路面電車で通していました。途中で乗客が下りて押したこともあったそうです。線路も消え峠にしては広い道が残りました。そしてさらに今は黒い線の部分に『休山トンネル』ができているので、呉越え峠は交通量が少なくなっています。

 それでもなぜそうまでして路面電車を通していたのか?人口も多かったことに加えて東側の広地区も大きな町だったからです。もしかしたら『呉市』ではなく『広市(ひろし)』になっていた可能性もあります。呉海軍工廠がありながら、同じ市に広海軍工廠ができたぐらいです。作中ではすずの義理のお父さんが、その広の海軍工廠に通っています。ちなみに、呉市に公立高校は多数ありますが名前に『呉』がついていないのは広にある『広高校』だけです(音戸高校は島にあり合併で呉になりました)。JR呉線もたいていは呉ではなく広駅始発の終点広駅です。

 広地区を見渡せる、黄色の大空山は春は桜の名所になっていますが、山頂には戦争の遺構である防空壕などの名残があります。地図右下の王子製紙呉工場の場所が昔の広海軍工廠です。黄色のあたりの道沿いにも防空壕が普通にあったと思います。今もあるのでしょうか…

 作中では呉の街には水兵さんがたくさんいましたが、今でも普通に水兵さんがいます。普通に潜水艦もありますし、戦争時に使われていたドッグなどの施設が普通に転用されて活用されています。

 街の方向や思想として、呉市は戦争の遺構を残して歩んでいるような気がしますが、広島市はどちらかと言えば未来志向で歩んでいるような気がします。戦争とは切り離せない二つの都市として対照的です。

 

 

 

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 草津と古江はすずのおばあちゃんのゆかりの土地です。江波はすずの実家がある場所です。どこも路面電車が今も通っている場所です。

 さらに広島の南にある江田島も戦争について考えるなら忘れてはいけない場所です。作中では水原哲の兄が通う、海軍兵学校がありました。当時は東京帝国大学海軍兵学校かと言われていた場所です。見学もできます。特攻隊の遺書など豊富な資料もあります。建物自体も素晴らしいです。レンガがつるつるしていました。広島を通して戦争について考えるなら行くべきです。むしろ、江田島や呉の方が直接戦争にかかわっていた場所です。被害者としての視点しかない原爆ドームと平和資料館だけを見て広島の戦争を語ることはできません。

作品の感想です。

 観た方が良いです。追加されている場面、削られている場面ありましたが漫画を忠実にアニメにしています。リンさんの場面が少なくなっているのは残念でしたが、エンディングは文句なくよかったですね。能年玲奈の声と広島弁よかったです。

 八丁堀で見ましたが普段アニメを見ていないであろう年齢の方が多かったのが印象的でした。場所柄だけではないはずです。

 

nejimaki96296.hatenablog.com

 今の呉市の現状についてです。第二の夕張になるかと言われていた時期もあったと記憶しています。