ねじまき士クロニクル

動物達集まる

モザイクなしの事故動画が出回る

 スパゲティを食べていたら友人に話しかけられました。

「すぐ近くの町で交通事故が起きたんじゃけど、誰かが撮った動画があるんじゃけど見る?食事中じゃけど。」

「あぁえーよ。別に気にせんよ。」

 と言って2分弱の動画を見せられました。

 なぜこんな事故動画がわざわざ事故が起きてから10分かそこらで拡散されているのだろうかと少し不謹慎ではないか思ったら「メディアが仕事をしない」ということを言っていました。

 確かにここには事件や事故があったからと言ってもヘリコプターは飛びません。TV局が車で来てもくれません。個人の携帯電話がマスコミのVTR代わりになっているのでしょう。事故が起きても、誰も何も報道しない、誰も何も記録に残さないという可能性すらあります。誰かが記録に残さないと、後から何も知ることはできません。

 事故自体は側面を大きく損傷したバスと路上に散らばるように投げ出されていた乗客。事故原因は不明。他に巻き込まれた車両があるのかも不明。夕方5時。都市と都市を繋ぐ幹線道路。片道大体150キロほどの道中。

 

「この女性は左手が曲がってはいけない方向に曲がっとるけど?」

「She is dying」

「たぶんこの女性は亡くなっとるけど」

「She is dead」

「何でこんな事故が起きたん?」

「No idea」

「救急車はすぐ来るん?」

「I don't think so」

「彼らは助かるん」

「I don't think so」

「俺もそう思う」

 

 

 とりあえず大きな事故があった時に、被害者の中に知り合いがいないかどうか確かめるために動画を撮影して拡散しているそうです。紹介してくれたのは事故を恐れてはいけない職業、看護師の友人。わざわざ見せてくるということは何かこの状況に対して思うところがあったのでしょうか?

 経過を見るために、それからしばらく何日かはネットのニュースのサイトをチェックしていましたが続報はありません。おそらくここではバスの事故と言えども日常茶飯事なのでしょう。日本よりも交通事故での死亡率は何十倍か高いはずです。

 もちろん医療体制は整っていないため事故は即、死に繋がります。それでなくてもこの国にはガンですら手術できる病院が片手で数えるほどしかないということです。もちろんガンのような手術を受けられるのはお金持ち限定です。例えば糖尿病でも継続して注射を打てるお金がなければ切断です。金の切れ目が四肢の切れ目です。日本なら切らずに済むかもしれないものでも切断です。日本が恵まれすぎているだけなのかもしれませんが。

 事故の被害者にはもちろん助かって欲しいですが…整備不良や路面状況や運転手の意識改革などは一朝一夕で改善できるものではなく…彼らには信仰によって来世があるのかもしれませんが、傍観者の私にはやるせない気しかしません。事故で人が亡くなるのは辛いものがあります。